賃貸減価償却の考え方について


賃貸物件では、退去時に「原状回復に戻す義務」が発生しますので、ご入居者様は「退去日当日までに、入居前と同じ状態」にしなければなりません。


ただ、長期間入居した部屋は、至る所で「劣化」しているので、入居時と同じ状態に戻すことは不可能となってしまいます。そこで、原状回復に戻すことができない場合には、その劣化や破損や汚損が、借主若しくは貸主どちらに原因があるのかを、管理担当者が判断して、退去精算見積もりを作成します。


Yahoo!不動産に「退去精算に関する投稿」がありました。

投稿された方は、退去時において「減価償却が発生」しているはずだから、たとえ借主責任による破損や汚損であっても、減価償却が適用されるのではという内容です。


では、本当に借主責任による破損や汚損があった場合、減価償却は考慮されるのでしょうか?投稿文を抜粋させていただき、考えてみましょう。


 

私は築9年の賃貸メゾネットタイプの家に住んでいます。入居して6年目です。

何年か前に墨汁を壁に2か所ほど垂らしてしまい、色々なもので取ろうとしたり、隠そうとした結果、壁紙が剥がれてしまったりなどしてしまいました。


壁紙の価値が6年で1円にあると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?


1階も2階も経年劣化によって壁紙は傷んでいます。父の部屋ではなぜかお香を焚いている時があります。


特に1階は壁に小さな穴や大きな穴、小さな汚れがあり、2階のフローリングは日焼けによって色が変色している所があります。


母は壁に穴が開いた時、私たちが退去する時には「大家さんが変えなきゃいけない」って、言っていました。


敷金は1か月分支払い済み、1か月の家賃は9万円

ハウスクリーニング代は6.8万円

最初から家全体が汚れていました。

(前回の人が使い方が悪く、キッチンや窓にカビが生えていたり、玄関ドアがボコボコだったった)


この場合、退去時にどのくらい請求されますでしょうか?

出典:Yahoo!不動産「教えて!住まいの先生」

 

目 次

1.壁紙の減価償却の考え方

2.お香のニオイは、100%借主責任

3.壁紙の穴について

4.ちょっと気になったところ

5.まとめ

 


1.壁紙の減価償却の考え方

壁紙の減価償却の考え方

国交省のガイドライン上においては、確かに壁紙の減価償却は6年で終了するので、6年以上入居した場合の「壁紙の価値は1円」であることは、確かにあっています。


ただし、この考え方は「借主・貸主どちらに原因があるのかわからない場合」のみに適用される話です。例えば浴室に「カビが発生していた」場合、通常であれば「100%借主負担」となり、原状回復費用を請求することになります。


しかし、6年入居された部屋においては、しっかりと掃除をしていたとしても、年数が経過しているので、どうしてもカビが生えてしまうことは「決して不自然なな話」ではありません。一方「2年で浴室にカビが発生していた」場合においては、明らかに使いかに問題があるのではと考えられます。


実際に、入居前の浴室施工問題(例えばコーキングを打ち直していたかどうかなど)も考慮しなければ、しっかりとした結論を出すことは難しいのですが、上記の例では2年でカビが発生した部屋には「善管注意義務違反」が適用され、カビが生えてしまった箇所の原状回復費用をを請求されますが、6年入居された部屋の浴室に関しては、請求したとしても「1円」となる可能性が高いです。


つまり、今回の相談内容の「墨汁を壁に垂らしてしまった」ことによって、壁紙が破損してしまった場合、故意過失による破損や汚損であるため、破損してしまった箇所の一面分の壁紙張替え台を請求されることになります。



2.お香のニオイは、100%借主責任

お香のニオイは、100%借主責任

心身をリラックスさせたいと思い、お部屋でお香を焚いている方もいると思います。


お香を焚く行為に関して、契約上問題はありませんが、ただそのお香が壁紙に染み付いてしまって、退去時になってもお香のニオイが取れない場合、善管注意義務違反に該当してしまい、ニオイが取れない箇所は全ては張替えとなります。


これは、タバコも同じです。


どうして壁紙を交換しなければならないのかというと、お香とたばこのニオイが壁紙に付着してしまうと、クリーニングをかけても「ニオイを完全に除去」することが不可能となってしまい、交換する以外方法がないからです。


さらに、お香やタバコのニオイに関しては、換気をしっかりとして使用して頂ければ、ニオイが壁紙に付着することは考えにくいことから、入居年数一切問わず借主責任となります。

 

・お香のニオイに関する記事→今すぐ読む

・賃貸とたばこ事情に関しての記事→今すぐ読む

 

3.壁紙の穴について

壁紙の穴について

賃貸物件において、カレンダーやポスターなどを掲示する時、画鋲などを使用することがあると思います。


一般的な賃貸借契約書には、画鋲程度の穴であれば、通常使用の範囲内として認められるので、退去時に「画鋲程度の穴」が開いてあったとしても、原状回復日よはオーナーさん負担となります。


ただし、今回の事例では「壁に大小の穴」があるとのことですが、もし入居後に「目視できるような穴」をあけてしまった場合、通常損耗として認められることは「まずありえない」ので、穴をあけてしまった箇所の一面の壁紙を交換することになり、費用は借主負担となります。

(詳細に関しては、こちらの記事をお読みください)



4.ちょっと気になったところ

ちょっと気になったところ

質問者様の「前回の人の使い方が悪く、キッチンや窓にカビが生えていたり、玄関ドアがボコボコだった」とのことですが、気になるところが数点あります


①キッチンや窓にカビが生えていた

もしこれが入居前に発生していたのであれば、大問題です。

入居前には「必ずハウスクリーニングが行われている」はずであり、お部屋を引き渡す前には、目視できる汚れは必ずきれいに掃除をしているはず。もし入居前にカビなどが発生していたら、クレームを伝えていただき、早急に対応してもらう必要があります。


②入居後にキッチンや窓にカビが発生したら…

これは明らかにお客様の不注意によって「発生させてしまった」と言っても過言ではありませんので、もし退去時にカビが発生していた場合は、善管注意義務違反となり、原状回復費用を支払っていただく事になります。


③玄関ドアがボコボコだった

入居前に玄関ドアがボコボコの状態で、このことを管理会社がしっかりと把握していたら、退去時お客様の過失はありませんので大丈夫ですが、問題は管理会社が「玄関ドアの存在を把握していなかった」時。

もし把握していないと、退去時に「これは現入居者がボコボコにしたもの」と、判断してしまう可能性が高く、そもそも玄関ドアが「ボコボコになる」ことは、通常使用ではまずありえませんので、過失責任を問われてしまいます。


もし入居前に、「明らかに前の入居者がつけたキズや汚れ」を見つけた場合、管理会社に連絡すると同時に、退去時にもめないようにするためにも「証拠写真」をとっておき保存されることをおススメします。



5.まとめ


今回の事例において、契約時に支払った「敷金」だけで退去費用が精算できるのかというと、「破損個所がどのくらいあるのか」「壁紙単価及び平米数がどのくらいなのか」などによって、金額が全く異なることから「敷金だけで退去精算費用を賄えるかどうか」は、ここでは伝えることができません。


ただ今回の事例で分かったことは、お客様過失があったとしても、そのことを「減価償却」に結び付けたい=退去費用を抑えたいと考えている人がいるということ。


故意過失による破損や汚損は、原則として「減価償却は考慮」されません。もし減価償却を全面的に認められるのであれば、明らかにオーナーさんにとっては不合理になってしまいます。


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